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発酵食品の力

当店の商品や発酵について、東京農業大学の前橋健二教授にお話しを聞くことができましたのでご紹介させていただきます。

プロフィール

前橋健二
東京農業大学応用生物科学部醸造学科教授

同大学応用生物科学部醸造科学科助手、講師、准教授を経て、2016年より現職。2003年には米国モネル化学感覚研究所にて味覚遺伝子の研究に従事。発酵過程における微生物の代謝と酵素作用による食品成分の変化、新規発酵調味料の開発、味の解析や味覚のしくみなど、「発酵」と「味」について多方面から科学的アプローチを続けている。

生揚げ醤油の力

生揚げ醤油には新鮮な香りがあります。

醤油諸味の中で酵母が発酵した際に、多くのアルコール類が生じています。

これらは加熱処理によって若干揮散してしまいますが、生揚げ醤油にはそのまま残っているので爽やかで新鮮な香りに感じられます。

新鮮なお刺身と相性がいいでしょう。生揚げ醤油を煮物などの加熱料理に使うと、その時に加熱香気が生じて煮物とよく調和します。

生揚げ醤油にはタンパク質分解酵素やデンプン分解酵素などの麹菌酵素が残存しているので、生塩こうじと同様に食材のうま味を引き出す力があります。少量加えるだけでもおいしさが高まります。

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加熱処理した醤油の力

醤油の香り成分には加熱することによって生じるものが多くあります。

加熱によって生じる香りを「火香(ひが)」といい、香ばしくて食欲をそそります。

また、加熱処理をすることで醤油の色は一層赤味を帯びます。

加熱処理をするもう一つの目的は、殺菌と酵素の不活性化です。

保存性が増し、品質の安定性が高まります。

昔から醤油造りの秘訣は「一麹、二櫂、三火入れ」といって、加熱処理することは良い醤油を作るための大事な仕上げなのです。

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味噌の力

「味噌汁一杯三里の力」や「味噌汁は不老長寿の薬」と昔から伝えられていますが、経験が示す通り味噌にはすばらしい健康効果があります。

大豆タンパク質、イソフラボン、レジスタントプロテイン、オリゴ糖、食物繊維、脂肪酸エステル、アミノ酸、ペプチドなど、原料に由来する成分や発酵成分による抗酸化作用、コレステロール低下、発がん抑制などが研究によって明らかになってきました。

しかし忘れてはならないのは、味噌の力は料理をおいしくすることです。

適度な塩味とうま味の付与、消臭作用によって食材をおいしく変えます。

また、生味噌にはこうじ菌の酵素が残っているので、塩糀と同じように食品素材からうま味を引き出す力もあります。

おいしい味噌で作る味噌汁は具の野菜をおいしくし、おいしい味噌でつくる煮物・焼き物は肉や魚をおいしくし、栄養に富む自然の食材を摂取することを助けます。
味噌はキング・オブ・調味料です。

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塩糀の力

塩糀は”おいしさを引き出す魔法の調味料”と言われますが、その秘密は酵素の作用にあります。デンプンを分解して甘味を出したり、タンパク質を分解して肉を柔らかくしたり、うま味を出す効果があります。

塩糀に使われている米麹は、大豆を分解してみそを作り出す力を持っていますが、この力を料理に利用するのが塩糀なのです。

この米麹の酵素力は加熱することで弱まりますが、未加熱の生タイプ塩糀には酵素力が完全に残っています。

また、塩糀はお米の甘味を持っているので、料理に塩味とともに甘味も加えてくれます。

絶妙な塩味と甘味とバランスで、間違いのないおいしさに仕上がるのも塩糀ならではです。

塩糀は、「料理に塩味と甘味をバランスよく与える+素材からうま味を引き出す」というのが魔法の力の正体です。

ローズマリーは、特徴的な香りを持ち地中海の国々では肉料理に欠かせない食用ハーブの一つです。

抗アレルギー作用、抗菌作用、抗肥満作用など様々な薬理効果を持つことでもよく知られていますが、最も注目されているのが強力な抗酸化力です。

ローズマリーにはポリフェノールが豊富に含まれているので、塩糀にローズマリーを漬け込むことによってローズマリーの有効成分が塩糀に移行して、強力な抗酸化作用とおしゃれなハーブ香を持つローズマリー塩糀ができます。

抗酸化力を持つローズマリー塩糀は、体内の有害な活性酸素を消去することによって老化防止、発がん抑制が期待されるほか、肉や魚の油の酸化抑制効果も期待できます。

また、ローズマリーの香り成分にも薬理効果があり、記憶力向上効果やアルツハイマー予防効果について研究されています。

そして香りは味にも影響を与えます。ローズマリーの香りはほとんどの食材と相性がいいので、ローズマリー塩糀を使うことで、味と香りのダブル効果で料理をおいしく変えるでしょう。

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あまざけの力

あまざけは米をこうじ菌で発酵させる発酵甘味飲料です。

米のでんぷんが、こうじ菌の酵素で分解されブドウ糖にかわることで強い甘味を示します。

あまざけに含まれる糖の大部分はブドウ糖ですが、ブドウ糖のほかにも麦芽糖やイソマルトオリゴ糖など多種類の糖類が含まれるので、純度の高い砂糖とは違って複雑な甘味を持ちます。

あまざけには糖だけでなく、食物繊維、ビタミンB群、アミノ酸、ペプチド、ミネラル、抗酸化物質など多種多様な成分が含まれます。

これらの成分は、腸内環境を整えるとか、糖の代謝を助けるとか、血圧を下げるなど、体の調子を整えて健康を維持するために有益な成分です。

これらの成分は、一度に多量に摂るのではなく毎日コツコツ摂るのが効果的なので、日々の食事にあまざけを甘味料として取り入れるのがおすすめです。

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